AI画像処理技術などの特許技術を生かし「後方警戒装置」を開発、JAFと二人三脚で安心・安全な社会づくりに貢献

~ AI技術を活用した「後方警戒装置」のサポートにより、高速道路上という危険な現場で作業する隊員の安全も確保 ~

一般社団法人 日本自動車連盟
https://jaf.or.jp/

お客様の課題

救援活動中の安全確保のために、さまざまな対策を実施しているが、高速道路での路上作業では後続車に追突される危険がある。

特に危険な夜間での作業でも利用可能である、「後方警戒車(者)」の代わりになる対策を実施したい。

救援支援をされているお客様の安全、隊員の安全確保を行い、速やかな救援活動が必要。

課題解決の手法

AI画像解析、独自機能を搭載した後方接近車両検知システムを提供した

背景・課題

高速道路での救援活動時の安全を確保すべく
後方から接近する危険車両を検知する「後方警戒装置」の運用を開始

日本自動車連盟(JAPAN AUTOMOBILE FEDERATION:JAF)といえば、24時間365日駆けつけるロードサービス事業を展開する一般社団法人である。道路上で事故などのトラブルがあった際に、まさにドライバーにとって命綱ともいえる存在だ。

高速道路では、多くの自動車がハイスピードで行き交っているため、救援要請を受ければすぐに作業し、二重三重に起こる事故の連鎖を防止しなければならない。ここでは、事故の当事者、走行するドライバー、そして作業にあたる隊員たちの安全確保をいかに確実に行うかが重要になる。

残念ながら、不意に飛び込んでくる車両をゼロにするのは難しい。しかし、事故がきっかけで隊員たちの尊い命が失われる事態をゼロにする努力は絶対に惜しんではならない。

これまでも高速道路での作業においては、標識装置の設置や後方警戒用車の配置といった安全対策を行ってきた。現在JAFでは、作業車両と隊員・後方警戒車と隊員の2車2名体制で対応している。しかし、地域によっては夜間に2台目の後方警戒車をすぐには手配できず、想定以上の時間がかかってしまうことがあった。

そこでJAFでは、2022年11月より「後方警戒装置」の運用を開始。この後方警戒装置は「車両検出のためのカメラ」「画像を分析し検知する小型PC」「車両の接近を知らせるブザー」で構成されている。

従来の後方警戒車の代わりに後方警戒装置を設置し、作業現場の後方300m先から接近してくる車両を検知すると警報を発するようにした。そうすることで、危険を伴う高速道路上の作業でも高い安全性を確保でき、1車1名体制での対応も可能となった。これにより、複数の現場への対応がより迅速にできるようになった。

後方接近車両検知システムの活用

解決策

夜間に高速走行する車両を遠くから検知するために
PCIソリューションズが持つAI画像認識など特許技術を活用

後方警戒装置の実現にあたって、数々の難題を乗り越えてきたという。まずは、夜間における検知精度の課題だ。

夜間の事故処理対応は特に危険で、現場に接近する車両をなるべく遠くから検知できることが条件であった。さらに、緊急を要する現場でも作業の邪魔をしない省スペースなもの、かつ設置した救援車両の振動にも耐え誤作動しない機器であることも求められた。

これらの課題をクリアできる技術と体制を備えていたのが、PCIソリューションズだった。

PCIソリューションズが開発した「後方接近車両検知システム」は、夜間での接近車両の検出や、約300メートル後方からの接近車両検知などが行える。これらを実現するために、道路面積の大きいエリアを検出できる「道路認識技術」、後方からの接近車両のみを検知して知らせる「移動体認識技術」、夜間でも光の動きにより接近車両を判断できる「セル・照度変化検知技術」、同社独自のAIモデルによる「距離・速度・進路変更認識技術」といったPCIソリューションズの特許技術(特許番号:第6980887)が使われている。また、同技術は国土交通省の運営する新技術情報提供システム「NETIS」にも登録され、信頼性の高いシステムである。

実際の現場での利用を想定し、取り付け場所や機器構成、運用などの課題をクリアするためのハードウェアの選定も重要になった。導入後もなるべく機器交換をせずに機能をアップデートできるよう、ハードウェアに依存しすぎない工夫がされている。

今回の開発では、PCIソリューションズとPCIソリューションズ総合研究所の共同研究で開発したエッジAIの技術が生かされている。

PCIソリューションズの培ってきた、車載システムやAIでの画像検知技術における経験・知見と、JAFの方の現場の経験・知見を持ち寄って丁寧に作り上げた、まさに両社の協業により生まれたシステムである。

効果および今後の展望

後方警戒装置の全国展開を視野に
より幅広いシステムへのAI技術採用を目指す

JAFの後方警戒装置は、現在一部地域にのみ配置されているが、今後は国内でさらなる展開が期待されている。PCIソリューションズはこれからもJAFの安全への取り組みを得意の技術で引き続き支援していく。

本プロジェクトではPCIソリューションズの蓄積してきたAI画像認識の技術が、現場で実際に活用できることが確認できた、まさに『大きな一歩』。

PCIソリューションズでは、登下校時の児童や外出時の障がい者などの交通事故を未然に防止する見守りサービスなど、社会の安全と幸せのためにAI画像認識技術を存分に活用していく方針だ。今回生まれたシステムが、痛ましい事故の撲滅や安心安全な社会づくりに貢献することを目指している。

写真左から)
株式会社PCIソリューションズ総合研究所 島山求
PCIソリューションズ株式会社 プラットフォーム事業部2部 山田久
株式会社PCIソリューションズ総合研究所 澤戸寛明
PCIソリューションズ株式会社 ソリューション営業部1部 河野愛
PCIソリューションズ株式会社 プラットフォーム事業部2部2課 本間薫
PCIソリューションズ株式会社 プラットフォーム事業部2部2課 原荘浩

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです