製造業DX推進体制の作り方|現場を巻き込み、経営を味方にする仲間づくり

目次

    今回のブログテーマは、『孤立しないDXの「仲間づくり」』です。

    DX担当者を悩ませる上からのプレッシャーと現場からの抵抗。「”経営陣”からは進捗を詰められ、”現場”からは『余計な仕事増やすな』と嫌がられる」という板挟み状態をいかにして打破するか。

    今回は、経営陣、現場それぞれの気持ちに触れて、状況を打ち破るための仲間づくりをテーマに、現場の巻き込み方と外部パートナーの正しい活用、そして経営陣の説得法を考えてみたいと思います。

    これまでの記事では

    その1~4もぜひご覧下さい

    DXの目的の見つけ方、自社の現在地の把握、スモールスタートの始め方について解説してきました。

    今回は、その取り組みを一人で抱え込まず「進め続けるための体制」をどう作るかがテーマです。

    製造業DXが『推進者の孤立』から始まる理由|板挟み構造の正体

    DX担当者が直面する『板挟み』の構造

    経営陣の強い期待

    経営陣

    で、いつになったらDXの効果が出るんだ?
    早く進めてくれ(早く成果を出せ)

    DX担当者は孤立無援
    板挟みでパンク寸前
    DX担当者
    DX担当者

    現場の強い抵抗

    現場

    今のやり方で問題ない。これ以上、ややこしいシステムを入れて現場を混乱させるな(余計なことをするな)

    DX推進を任命されて一番辛いのは、「誰も味方がいない」と感じることかもしれません。日々の生産に追われる現場にとって「新しいこと(DX)」は、それだけで「リスクであり、余計な仕事」に見えてしまいます。

    この構造を覆し、「現場のキーマンを味方にし、経営陣を説得し、外部を賢く使い」、あなたを守る、強固なチームを作るには、どうしたらいいでしょう。

    【現場攻略】DXのキーマンを味方にする『一本釣り』の順番

    組織論において、変革をスムーズに進めるには「特定のキーマン」を味方にすることが鉄則です。はじめから全員を説得しようとしても、なかなかうまくは進みません。

    現場を攻略する『巻き込みの優先順位』

    現場のキーマン(フォロワー) 

    ★最優先

    工場の班長や、若手から一目置かれている中堅社員。
    この人を口説き落とせば、現場の世論が『とりあえずやってみるか』に変わる

    決裁権者(インフルエンサー): 工場長や製造部長

    現場への影響力が最大。
    いきなり上に話を上げず、①の理解を得てから一緒に相談に行く

    一般メンバー

    キーマンが動いているのを見て、自然とついてくる。

    現場の抵抗を抑えるDX推進の伝え方|NGワードとOKトーク

    キーマンを一本釣りするときも、実際に現場に落とし込むときも、主語を間違えると大変なことになります。最初の一言は慎重に言葉を選ぶのが、成功のカギです。

    現場に言ってはいけないNGワードと、刺さるトーク

    NGワード

    DX担当者

    経営戦略でDXが決まったので、このシステムを使ってください

    現場

    OKトーク

    DX担当者

    毎日の転記・集計作業って無駄ですよね。
    作業を減らして、毎日定時で帰るために、一緒にシステム試しませんか?

    現場

    早く帰れるなら、協力してみるか

    DXという言葉は使わず、「主語を現場のメリットにすること」がコツです。
    「仕事がどう楽になるか」だけを熱弁してください。

    特に、現場でみんなから頼りにされている「インフルエンサー的なベテラン・中堅社員」を、最初の一歩(PoC)の設計段階から巻き込み、「一緒に作ったシステム」という形にするのが一番の抵抗対策です。

    経営を説得するDXロードマップ|マイルストーン(中間目標)の合意

    経営陣の不安は、「いくら投資して、いつ、どんな成果が出るのか見えない」ことです。これを解消するために、ロードマップと成果の「期待値コントロール」が重要です。

    短期(3〜6ヶ月)
    導入・プロセス効率化
    (定量的成果)
    「紙の削減、入力時間の短縮(○○時間を削減)」など、すぐ測れる実績を作る。
    中期(1〜2年)
    品質・リードタイムの改善
    (事業成果)
    データ連携による「段取り替え時間の短縮」や「不良率の低下」など、利益に直結する成果を出す。
    長期(3年〜)
    新しいビジネスモデルの
    確立
    (経営成果)
    顧客への付加価値提供や、ダイナミック・ケイパビリティの獲得。

    【コンセプト出典】:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」

    経営陣に「3年後に売上が上がります」というゴールだけを示しても、数か月後「どうなっている?」と聞かれることはよくある体験だと思います。そして次には、「効果はいつ出る?」「いくら儲かる?」というお決まりのセリフです。経営者は黙って3年待ってくれることはまずありません。

    「最初の3ヶ月で、まずこの部署の残業時間を月30時間減らします。それができたらステップ2に進みます」という「マイルストーン」を提示してください。

    経営陣は、約束が小さくても「有言実行」されることで、プロジェクトに対する信頼感を高め、次の予算を出してくれるようになります。

    DXの外部パートナー活用法|コンサル・ベンダーとの正しい付き合い方

    社内のリソースだけでDXを推進するのは困難です。しかし、外部のコンサルタントやITシステムベンダーなどの使い方を間違えると、高額な費用だけを失う結果になります。

    役割(付き合い方) × 悪い付き合い方(丸投げ) ○ 良い付き合い方(伴走・自走)
    システムの開発・選定 「自社に合うシステムを提案して」とベンダーに依頼する 自社で「変えたい業務プロセス」を整理した上で、ツールの選定や開発を依頼する
    ノウハウの吸収 コンサルに資料作成やプロジェクト管理を任せ、自社のDX担当は進捗の報告を受ける総監督になる コンサルに自社のDXチームに入ってもらい、必要な資料作成やプロジェクト管理を一緒に行う
    将来のビジョン 「何を目指すべきか」のゴール設計をコンサルの成果物にして業務を依頼する ゴールは自社で決め、そこに至るための「専門知識や技術」サポートを受ける

    外部のベンダーやコンサルタントは、強力な味方ですが、「御社の業務のプロ」ではありません。

    業務を熟知した皆さん自身が「何を変えたいかは自社で決め、どう実現するか(技術)を外部に頼る」という役割分担を意識してください。最終的に「DXを自走化する」ことを念頭に、外部のノウハウを活用を検討してください。

    『DX応援団』のキャスティング|推進体制を作る3人のチーム

    自社で推進体制を作るためのキャスティングを決めます。キャスト次第で、DX劇場の成果の半分以上が決まるといっても過言ではありません。

    役割 役名 選定基準
    プロデューサー 熱きリーダー あなたもしくはあなたのチーム
    キャスト1 現場の味方(キーマン) 今回のプロジェクトで、真っ先にメリットを感じてくれそうな「現場の信頼が厚い人」
    キャスト2 経営の盾(スポンサー) 役員会で「あいつらの実験をもう少し見守ってやろう」と庇ってくれそうな、「DX」に理解のある役員・役職者
    キャスト3 外部の強み(パートナー) 自社に圧倒的に足りていないピース(IT 技術力、プロジェクト管理のノウハウなど)を補える外部の協力相手

    DX担当者は「技術の専門家」である必要はありません。経営、現場、そして外部パートナーを繋ぐ「最高のプロデューサー」こそが、目指すべき姿です。それぞれの立場に寄り添う言葉を使い分け、全員が同じ方向を向く「最高のチーム」を、まずは身近な3人から作ってみましょう!

    出典・参考資料(公的資料)】:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」(2024年9月19日改訂版)
    (※人材育成・確保、推進体制の構築プロセスに関するガイドラインを参考)/
    独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業向け手引き」

    PCIソリューションズでは
    製造業DXに関するご相談を承っております。

    「何から手をつければいいかわからない」という段階の方も、
    自社の取り組み状況を一緒に整理するところからお手伝いします。
    お気軽にご相談ください。

    福田 剛

    PCIソリューションズ株式会社
    製造業DXデザイン室 室長

    略歴

    • 電子部品製造業の生産技術部にて、生産設備の選定・導
      入、専用機・検査機の電気制御設計などを担当
    • 計測・制御用PC部品の調達・販売・サポートなどを担当
    • 新規事業の企画・立上を担当