足元の「見えない敵」を可視化する|レガシーシステムの棚卸しとDX成熟度診断

目次

    迷子にならないために「どこから手をつけるか?」

    今回のブログテーマである、『足元の「見えない敵」を可視化する』では、自社のDXでどんなステージにいるのかを確認しながら、隠れたデータ資産を探し出す方法に焦点を当てて行きたいと思います。

    前回・前々回の記事

    What-is-DX-サムネイル画像

    その1、その2もぜひご覧下さい

    最終ゴール、そして自社の課題の見つけ方・目標設定について解説しました。

    よく言われる、システムのサイロ化の状態やなかなか進まないペーパーレスをどうやって、整理し克服していけばいいのかは、どこの会社でも悩ましい問題です。

    今回は、そんな課題に対して、どこから手をつけるのがいいのかを、考えていきたいと思います。

    現場を身動きできなくさせている「2つの足かせ」

    システムの「サイロ化(縦割り)」

    生産管理、営業、経理、設計のシステムがそれぞれ独立。データが繋がっておらず、二重入力や手作業での集計が多発している。

    進まない「ペーパーレス」

    工場には「紙の作業指示書」「手書きのチェックシート」が溢れている。現場に貴重なデータは存在するのに、紙に埋もれて「資産」になっていない。

    「DXをやろう!」と意気込んでも、何がどこにあるか分からない。システムが複雑に絡み合っていて、どこを触ってもトラブルが起きそうで動けない。これが、多くの製造業が陥る「迷子状態」の正体です。

    暗闇の中で闇雲に動くのは危険です。まずは、自社が今どこにいて、何が足かせになっているのかという「地図と現在地」を手に入れることから始めましょう。

    【Step1】DX推進指標でわかる、自社のDX成熟度「5段階診断」

    自社のレベルを客観的に測るため、経済産業省が推奨する「DX推進指標」の考え方を活用します。

     製造業におけるDX成熟度の5段階(簡易版)

    レベル 状態 説明
    レベル1 散発的 一部の人がExcelなどで効率化しているが、会社としてはバラバラ。
    紙がメイン。
    レベル2 一部での実践(局所的最適) 「生産管理システム」などは導入されたが、他部署と繋がっていない(サイロ化状態)。
    レベル3 全社戦略に基づく推進(全社最適への一歩) 部門を超えてデータを繋ぐ計画があり、標準化が進み始めている。
    レベル4 持続的変革(持続的なDX) 工場、営業、サプライチェーンがデータで繋がり、状況変化にリアルタイムに対応できる。
    レベル5 グローバル・トップクラス データをもとに、これまでにない新しい製品・サービス(ビジネスモデル)を生み出している。

    出典・参考資料(公的資料):経済産業省「DX推進指標とそのガイダンス」

    日本の製造業では「レベル2(局所的最適)」にとどまっている会社が多く見受けられます。「工場の中だけ」「営業の中だけ」で完結しているレベルです。

    自社のDX成熟度がレベル2だと分かれば、次にやるのは「さらに高額な工場用システムを入れること」ではなく、「今ある工場データと営業データをどう繋ぐか」というレベル3へのステップです。

    正しいステップを踏むことで、無駄な投資を防ぎ、効果的なDX投資を進めていきましょう。

    【Step2】レガシーシステムの棚卸しチェックリスト

    古く、ブラックボックス化したシステムはDXの最大の敵です。まずは「IT資産の健康診断」を行いましょう。

    レガシーシステム棚卸しのチェックリスト

    • 「属人化システム」はないか?
      「元社員の〇〇さんが作ったマクロやAccessのシステムで、中身が誰もわからない」
    • 「データの二重入力」が起きていないか?
      システムAに入力した内容を、わざわざ印刷して、システムBに手入力し直している。
    • サポート切れ、またはブラックボックス化していないか?
      システムの改修を依頼しようにも、開発ベンダーすら当時のコードが分からなくなっている。

    製造業の現場には、長年現場を支える「秘伝のタレ」のようなExcelマクロやシステムが存在します。当時は便利だったかもしれませんが、これがDXでデータを全社連携する際の「最大の障害(ブラックボックス)」になります。

    まずは「社内にどんなシステムがいくつあり、誰が管理しているのか」を洗い出すことから始めてください。それが「足かせ」を外す唯一の方法です。

    【Step3】紙に眠る『隠れたデータ資産』を発掘する(ペーパーレスの再定義)

    「紙をなくすこと」自体が目的ではありません。「紙に眠っているデータを資産に変えること」が目的です。

     製造業に眠る「隠れデータ資産」の例

    眠っている状態(ただの紙・ゴミ) デジタル化(アセット化)すると
    保管箱に眠る、過去5年分の
    「手書き点検表」
    過去の故障パターンを分析できる
    「予兆検知データ」
    ベテラン作業員の
    「個人メモ・手帳」
    若手でもすぐ手順がわかる
    「デジタル標準作業書」
    部署ごとにバラバラに保管された
    「PDFの図面」
    全部署から一瞬で検索できる
    「共通3D CADデータ」

    現場から「ペーパーレス化なんて面倒くさい」と反発されるのは、「紙をデジタルに変える手間」だけを押し付けているからです。

    そうではなく、「その紙に書かれているデータは、実は宝の山なのです。これをデータ化すれば、過去のトラブル事例が検索できるようになり、皆さんの段取り替えが楽になりますよ」というように、『データ資産の活用出口』をセットで示すことが重要です。

    明日からできる『IT・紙の棚卸し』

    自部署、または関連部署で以下の2つのリストアップから始めてみてはいかがでしょう。

    • システムのサイロ化を発見する
      日常業務の中で、情報を『転記』している作業や、紙で印刷して隣の部署に渡している業務をすべて書き出す
    • レガシーブラックボックスを発見する
      もし担当の〇〇さんが明日急に退職したら、動かなくなる・修正できなくなるシステムやExcelはどれか?

    どこから手をつけていいか分からないときは、

    • 一番みんなが面倒くさがっている二重入力の場所
    • 一番リスクが高い属人化システム

    から手をつければ間違いありません。そこがDXのスタートラインです。

    出典・参考資料(公的資料):経済産業省「DX推進指標とそのガイダンス」(令和元年)
    経済産業省「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」(平成30年)
    経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」(2025年)

    まとめ:現在地を知ることが、製造業DXの最短ルート

    今回は、製造業DXにおける『自社の現在地の把握』と『足かせの棚卸し』についてお話ししました。

    • DX推進指標の5段階で、自社のDX成熟度を客観的に確認する。
    • 属人化システム・二重入力・サポート切れの3点でレガシーシステムを棚卸しする。
    • 紙をなくすことが目的ではなく、紙に眠るデータを『資産』に変えることが目的だと捉え直す。

    さらにもう一歩踏み込んでお困りポイントを確認したい方は以下の資料をご確認下さい。

    「何から手をつければいいかわからない」という段階の方も、
    自社の取り組み状況を一緒に整理するところからお手伝いします。
    お気軽にご相談ください。

    福田 剛

    PCIソリューションズ株式会社
    製造業DXデザイン室 室長

    略歴

    • 電子部品製造業の生産技術部にて、生産設備の選定・導
      入、専用機・検査機の電気制御設計などを担当
    • 計測・制御用PC部品の調達・販売・サポートなどを担当
    • 新規事業の企画・立上を担当